大原則2
もうご理解いただけるだろうが、あけすけな明瞭性は、複雑な事物の
認識を台無しにしかねないのだ。包括的存在を構成する個々の諸要素
を事細かに吟味すれば、個々の諸要素の意味は拭い取られ、包括的存在
についての概念は破壊されてしまう。そうしたことの例は多くの人が
知るところだ。ある言葉を数回繰り返し、その際、舌と唇の動きを注視し
発せられる音にも注意深く耳を澄ましてごらんなさい。ほどなくその言葉
はうつろに響き、やがて意味を失ってしまうだろう。ピアニストは自分の
指に注意を集中させたりすると、演奏動作が一時的に麻痺することもある。
倍率の高い虫眼鏡で部分を念入りに眺めたりすると、全体の模様や人相を
見損ないかねない。
マイケル・ポランニー
技を分解して説明すると別のものになってしまう。 佐川幸義