大原則

楽に寝ている場合でも楽に立ってる場合でも、人間が生きている限り、

内臓筋は勿論のこと、骨格筋においても全然働く必要がないということは

事実としてありえない。しかし、眠っている時の寝返りが意識しなくても

できるように、目覚めている時のあらゆる動きにおいても、筋肉の緊張が

必要であるからといって 意識的に筋肉を緊張させようとする必要がないの

は明らかである。この自然の原理とは逆に、解剖学や運動力学が発達して

からだの動きの事実を分析するようになったために、その知識通りに意識

して動かなければならないと考える誤りを犯すようになってしまった。

人間のからだは分析的、意識的に動かすというようにはできていない。

もともとイメージ(重さ、思い)によって全体的有機的に働くように造られ

ているのである。

                  野口三千三

 

物理学の「三体問題」についてですが、私たちの思考は3つのことを同時

に扱えないんです。例えば、科学の世界は論文で成り立っていますが、

言語によって構成されている以上、基本的にはただ2つの関係、Aの時B,

Bの時Aというふうにしか扱えないことになりますね。でも人間の身体の

動きは3つどころかもっとたくさんのことが複雑に作用している。

ですから、その精妙な動きを言語で説明するのは根本的に無理なんです。

                  

                   甲野善紀